キャリア開発や就職活動支援の実務の中で、多くの人は働くことについて条件面に意識が向いていることを感じます。
働く理由が経済的な報酬だけであれば、就職活動にしても、転職活動にしても、迷わずに判断しやすいかもしれません。
しかし、人が働く理由は、本当にそれだけでしょうか。
キャリアの理論の中でも有名で最も包括的なものは、ドナルド・E・スーパー先生の理論です。
スーパー先生は、後年、国際的な「仕事の重要性研究」を指揮しました。
この研究の目的は、人が働くことを通じて得たいと思う様々な価値観が、文化によって異なるかどうかを確認することでした。
この研究で特定されたのは、14の働く価値観です。
①能力の活用:自分のスキルや知識を発揮できること
②達成:達成感が味わえること
③美的追及:美的追及ができること
④愛他性:人の役に立てること
⑤自律性:自律できること
⑥創造性:新しいアイデアや発見、デザインできること
⑦経済的報酬:お金を稼いで、生活の水準が高いこと
⑧ライフスタイル:自分の望む生き方を大切にできること
⑨身体的活動:身体を動かす機会を持てること
⑩社会的評価:成果を認めてもらえること
⑪危険性:スリルまたはワクワクを味わえる体験ができること
⑫社会的交流性:他の人と一緒に協働できること
⑬多様性:いろんな活動ができること
⑭環境:仕事やほかの活動にとって環境が心地よいこと
この研究を進めていくうちにわかったことは、働くことで見出せなかった価値観も、他の人生の役割を果たしていくうちに、その大切さに気づくことができるというものです。
例えば、「人の役に立てること」が大切という価値観は、人をサポートする仕事でも実現できるし、地域の活動やボランティア活動などを通じても満たすことができます。
また、人は自分が大切にしている価値観を人生の役割の中で達成しようとしますので、「成果を認めてもらえること」を重視しているケースでは、正当な評価を求めて転職活動をしようとした場合、何かのきっかけで上司とのコミュニケーションが良くなることで、わざわざ転職をしなくても、もしかしたら今の職場で満たされるということもあるわけです。
満足度の高い働き方のためには、①やりたい②できる③大切にしたい――ことのバランスが取れていることが大切です。
そして、これまでの経験を活かすことができれば、あなたの仕事や活動は加速します。
働くことを通じて自分が大切にしたいことや、何のために働くのか目的に気づくことは、これからイキイキと活躍するための原動力になります。
「何を大切に働きますか?」
ライフキャリアカウンセラー
折山 旭